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大橋謙策先生の部屋

老爺心お節介情報 第79号

2026年4月15日

新年明けましておめでとうございます!

年末年始、東京は穏やかな日々でした。皆様には、佳いお年をお迎えのこことお慶び申し上げます。 昨年の賀状で、「賀状仕舞い」をさせて頂きました。今まで、年末年始は賀状の対応に追われ、のんびりできませんでしたが、昨年末、年始と賀状のことを気にせず、ゆったりと過ごすことができました。多い年には1400枚の賀状を書いていましたので、まさに様変わりの年末年始の過ごし方です。 賀状の交歓は、お互いの消息を確認し、人のつながりを確かなものにする重要な手立てでしたが、寄る歳波には勝てません。お許しいただければと思います。 全国的に、人口減少、趙高齢化の進展、核家族化・都市化の中での家族力の脆弱化、地域を支えてきた住民力の減退等の厳しい状況の中で、地域福祉の推進を標榜してきた地域福祉研究者、社会福祉協議会関係者は改めて今こそ何ができるのか、何をすべきなのかを考える必要があります。それは、単なる政策対応でなく、草の根の地域福祉実践を豊かなものにしていくための努力が問われています。それはある意味、住民、行政、社会福祉法人、社会福祉協議会が手を携えて、協働して、「オール福祉」としてのネットワークを構築し、"住民の生活を守り、支援する地域福祉を推進すること"です。私も82歳になりましたが、体調管理に気を付けて、今までの"恩返し"の意味も含めて、草の根の地域福祉実践を豊かにできるよう、「関係人口」の一人として全国行脚をしたいと年始の誓いをしました。 国内外とも厳しい世相ですが、皆様にはお体に気を付けて、日本の地域福祉の推進、地域共生社会実現に向けて一緒に頑張って頂きたいと願うばかりです。  

                          (2026年1月2日記)

Ⅰ、論稿を読んでー岩城貞時著「拘禁刑と社会復帰支援――社会福祉施設の現場から考える」(『経営協』Vol506、2025年12月、全国社会福祉法人経営者協議会所収)

 岩城貞時さんは、28回続いている「四国地域福祉実践研究セミナー」の"船頭"仲間の一人である。 徳島県三好市社会福祉協議会の職員から転出し、現在は社会福祉法人三好やまなみ会の理事で、ワークサポートやまなみの施設長をされている。 岩城貞時さんは、社会福祉士の資格を有し、かつ20年間保護司活動をされている。この論稿は、2025年7月に刑法が改正され、刑務所などでの共生処遇の方法は大きく変わり、刑期を終えてからの社会復帰を見据えた受刑者の特性に合わせた個別処遇の考え方が導入されたことをコンパクトにまとめてくれている。この矯正処遇の考え方の改善は、より社会復帰後の社会福祉関係者の関わり方を求めるものである。「居住支援協議会」や社会福祉法人の地域貢献とも関わってくる大きな刑法の改正である。その論稿をこの「老爺心お節介情報」に掲載したので、社会福祉関係者には是非読んで欲しい。




はじめに

 私は、主に精神障がいのある方がたを対象とした障害福祉サービス事業を展開する社会福祉法人に勤務する一方で、一住民の立場で保護司を拝命しており、本年でちょうど活動20年目となります。保護司活動を続けるなかで、精神疾患や障がいによる特性がある対象者と接することが度々あり、いつしか司法分野と社会福祉分野の強力な連携の在り方を考えるようになりました。
 そのようななか令和7年6月より刑法が改正され、これまでの「懲役刑」と「禁錮刑」が廃止、新たに「拘禁刑」が導入されました。
  今回は、標題に沿って拘禁刑が導入された背景や法整備の経緯、社会復帰支援のよりよい方策等について、本業で勤める社会福祉法人でできる役割や連携できることから考え、皆さまと共有できればと思います。


1.刑法改正の背景

 まず、本年6月より改正施行された刑法では第9条において、これまで規定されていた懲役刑と禁錮刑が廃止され、死刑、拘禁刑、罰金、拘留及び科料を主刑とする旨規定されました。
  さらに、創設された拘禁刑は、第12条で無期と有期に分け、有期拘禁刑は一月以上二十年以下とすること、同条第2項において、拘禁刑は、刑事施設に拘置されること、同条第3項において、拘禁刑に処せられた物には、改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる旨規定されました。
   これらの背景には、これまでの懲役刑にあっては、作業が刑の本質要素であるため、どの受刑者も作業に一定の時間を割かなければならないことにより、改善更生や社会復帰のために必要な指導を行う時間の確保が困難だったという課題が、また、禁固刑については、作業を行う刑法上の義務がなく本人の申し出に基づいてのみ作業が提供されるため、改善更生や円滑な社会復帰に有用な作業であっても、本人が希望しない限り実施させることができないことが課題としてあったとされていて、こうした事情により今回の改正がなされたというわけです。


2.改正によって細分化された矯正処遇課程と社会福祉分野との連携

また、これまで適用されていた集団編成を見直し、犯罪傾向の程度AまたはBの2種で分類されていたものが、矯正処遇等の効率的な実施を図るため、受刑者の年齢、資質、環境その他の事情に応じた処遇指標を指定することとして矯正処遇過程を新設しました(右図参照)。

 矯正処遇課程は24種類に細分化されており、最も必要性の高い課程を一つ指定し処遇を実施することとなりました。とりわけ福祉分野で連携する可能性が高くなる分類がDS(Daily care-Senior)(高齢福祉課程)、DH(Daily care-Handicapped)「福祉的支援課程(知的障害・発達障害)」、DM(Daily care-Mentaldisorder)「福祉的支援課程(精神上の疾病または障害)」などとなります。
  その他、Y(Young)「若年処遇課程1~3」、L(Long)「長期処遇課程1~4」及びG(General)「一般処遇課程1~4」の家庭については、従来のAB指標が犯罪傾向の進度によって分類(Aであれば再犯の可能性は低く、Bは例えば常習犯窃盗など再犯の可能性が高い受刑者としてそれぞれ集団編成して処遇)していたものから、処遇レベルを1~4段階に、さらに再犯リスクの高低や矯正処遇取り組む態度、その他改善更生に向けた心構えの程度を評価軸に加えて、より多角的な視点から総合的に判定されることとなりました。
 これらは、その後、仮出所や刑期終了後出所した際に円滑な地域移行のために必要となる福祉事業所等との連携を図るうえで有用な課程になると思われます。受刑者の具体的な特性にスポットを当てた処遇となるため、出口支援の際も分野別の福祉事業所との連携を図るための情報を共有しやすく、受刑中の本人の生活状況、作業姿勢や就労への意欲などを把握、共有できることでより円滑な福祉支援に結び付けることが可能となります。
 例えば、矯正処遇の充実として行われる作業では、受刑者の特性に応じて必要なものを組み合わせて実施できるよう内容や方法の充実を図ることとされ、必要に応じて改善指導や教科指導も組み入れることができるとされています。
 また、令和6年の法改正にあたっては、刑事施設の長は、受刑者の円滑な社会復帰を図るため、釈放後に自立した生活を営む上での困難を有する受刑者に対して、①「適切な住居その他の宿泊場所の確保」、②「医療及び療養を受けること」、③「就業又は就学」の支援を行うと示されています。
 このことを受けて社会復帰支援の充実施策としては、矯正施設入所後の早い段階から支援ニーズを把握し、住居・就業先・福祉サービスの確保など、釈放後の社会生活を見据えた支援を実施するとされています。病状や障がいなどの特性を考慮したうえで処遇され、必要な支援項目が処遇段階である程度把握され、釈放後地域で生活を送る際に必要となる「住居」、「就業先」、「福祉サービスの確保」に関する情報が地域への移行や定着を支援する関係者と共有されることにつながるならば、実際の地域での生活支援の重要な機能をもつことができ、具体的で有効な連携体制の構築が期待できるようになるといえます。
 さらに、地域での支援体制を円滑なものとするために、更生保護部局等を通じて地域の支援機関関係者等が集まり、現行制度の共通理解や事例などを共有し、実際の出所後の支援に備える「再犯防止地域支援ネットワーク会議」、「刑務所出所者等高齢者・障がい者の地域生活定着支援連絡協議会」などといった会議が開催され、徐々に地域における支援関係機関の受刑者に対する認識と理解が進みつつある段階になっていると考えます。

 
3.社会福祉施設としてできる社会復帰支援の在り方を考える

 今回の刑法改正により、高齢や障がい、精神等疾患も考慮して細分化された校正処遇課程は、各社会福祉施設が受刑者出所後の地域生活を送るために必要となる支援を提供する際に連携しやすい体制整備となっています。
 そうなると、先述した出所後を見据えて、支援に携わる関係機関の準備が必要となります。
 例えば、出所者が抱える多くの課題の一つに「住居」があります。刑事施設が送り出す際に更生保護部局からさらに支援を行う関係機関につながってこそ、具体的な地域生活を見据えた支援内容が計画されることからも住居確保は重要な要素となります。
 そのためには、まずは支援機関としても住居探しに関わる場面も出てくることが考えられます。支援を進めるには地域の実情により違いもあり、困難も予想されます。
 本人が望む地理的条件、間取り、家賃の折り合いや保証人の確保等、様々な問題への対応があり、単独の支援機関だけでは難しい場面も考えられます。
 そこで要支援者の住居問題について、各機関参加型で検討する市町村レベルでの「居住支援協議会」が立ち上がりつつあり、もんだいかいけつに向けた対応策が協議されはじめています。
 ちなみに、当法人がある徳島県三好郡東みよし町社会福祉協議会が県内では現時点で唯一となる居住支援協議会を立ち上げ、法務省更生保護関係部局、県社会福祉協議会、県・町住宅所管課、県・町福祉所管課、不動産関係者、司法書士、行政書士、保護司、地域包括支援センター、障害福祉サービス事業所など幅広い関係者が構成員として参画し、具体的な協議が進められているところです。
 近年、社会福祉法人の具体的な連携の方策が進められておりますが、この居住支援協議会などは、高齢者や障がい者、それ以外の生活困窮の課題を抱える刑余者等の住まいの問題に対して、福祉関係者ならず様々の職種の方がたの知見がもち寄られます。問題の把握や具体的解決に向けた意見が出やすい点で、高い機能性を発揮できる点で評価でき、今後多くの社会福祉法人が参画して各地域に居住支援協議会が立ち上がり動きはじめると、福祉関係機関のみならず、刑事施設との連携も進みやすいことから、地域によっては有益な協議体の一つとして今後設置の拡大が期待されます。

4.拘禁刑と社会復帰支援をより有効につなげるために

 ちょうど1年前となる2024年12月に、私は保護司として「令和6年度四国ブロック再犯防止シンポジウム」に登壇する機会をいただきました。

 「地域における"息の長い"支援の実現~罪を犯したある孤独・孤立な"人"の立ち直り~」と題して、第二次再犯防止推進計画に掲げられている7つの重点課題の背景から設定された事例をもとに「入口支援」と「出口支援」の2つの支援のありようについて各関係者が意見・提言するというものでした。それぞれのしてんから語られる支援策は実に具体的で、福祉関係機関との連携に関する取組はここまで進んでいたのかと、大変に勉強させていただいた有益な機会となりました。
 特に「出口支援」のやりとりについては、事例で提示されたアルコールの問題がある受刑者の場合の説明として、以下のような具体的な説明を聞くことができ、大変心強い思いを持ちました。
 ■刑務所内部での改善指導で行われるアルコール依存回復プログラムへの参加
 ■出所後の自助グループや病院、精神保健福祉センターで行われる回復プログラムを継続して受けるよう促す働きかけ
 ■社会復帰支援として、社会福祉士資格を持つ職員による釈放後必要と思われる福祉や医療サービスの検討
 ■本人の希望により釈放後直ちににサービス利用できるような調整や関係機関への情報提供など。
 社会福祉施設の多くは、これまで、触法者の受入れに関して相当に慎重に判断してきたのではないかと推察します。それは、本人の生育歴、現在の病状や障がいの程度、受刑中に受けてきた具体的な支援内容などの情報を詳らかに得ることができないことや、再犯の可能性対する不安もあったのではないでしょうか。
 しかし、今回の改正に伴う各刑事施設の社会復帰支援の取組内容や送り出しの調整のていねいさは、福祉サービスを提供する社会福祉施設にとってはあんしんの材料としてとらえることができ、本人の福祉課題にしっかり向き合い本来の機能を発揮することができる体制になりつつあると考えています。 

おわりに

 冒頭で私は社会福祉施設従事者だけでなく、地域住民の役割として「保護司」活動を続けていることを記しましたが、拝命当時は、保護司であることを表出しにすることはタブー視されている時代でした。なぜならば、保護観察対象者は保護司宅に訪問して面接を受けることが基本で、自分が保護司であることを公にすることで、その保護司宅に通う姿があれば対象者が特定され不利益な状況になってしまう懸念も理由の一つにあり、その公表はより慎重であるべきと教わったと記憶しています。
 ただこの20年で担当させていただいた対象者には、何らかの病状や障がい特性がある人が少なからずいて、ときには医療機関や福祉関係者と情報を共有しながら保護観察と併せて福祉的支援を講じる必要があると、私は、考えています。保護観察所主任官と協議しながら関係機関に最低限必要な情報共有と、支援についての協力依頼につなげてきた事例がいくつもあったことから、以前から病状や障がいがある程度把握される対象者には、より多くの関係機関に情報共有と協力依頼による連携支援が必要になると考えてきました。
 ここにきて、ついにそのような機運が高まり具体的な対応策が動き始めたを心からうれしく感じるとともに、その発展に心から期待をしています。


Ⅱ、「そのときの出逢いが」の執筆裏話

 阪野貢先生に促されて「そのときの出逢いが」を書き始めてみたものの、執筆はそうスムーズには進まない。まず、50年前、60年前の記憶は定かでないし、それを確かめようにも筆者が収集した資料・蔵書は東北福祉大学大学院へ行っていて、唯一手掛かりは筆者が執筆した論文が年代ごとに保存されていることを手掛かりに執筆を進めている。 ところが、頭の中で「そのときの出逢いが」を書かなければいけないと思っているからであろうか、パソコンの前に座って書こうと思っても思い出せないことが多い。しかしながら、夜の睡眠中、睡眠がノンレム睡眠からレム睡眠に変わるとき、目覚めて眠れない時があり、その時にあれこれ思い巡らせていると、不思議といろいろなことが思い出される。それは断片的なものであるが、それをメモしておいて、朝、目覚めてからその断片的に思い出されたことを基にすると、いろいろなことが芋づる的に思い出され、文章が書けている。とりわけ、その時々に出逢った人々の名前はまさに芋づる的に思い出されるとういう不思議な状況である。もうすぐ、第5回目の1980年代後半の部分の「その時の出逢いが」を配信できるが、今となってみると、第4回までに書いたものを加筆修正しなければならない部分が多々あることに気が付く。人間の記憶のあいまいさを改めて痛感しているこの頃である。

(備考)

 「老爺心お節介情報」は、阪野貢先生のブログ(阪野貢 市民福祉教育研究所で検索)に第1号から収録されていますので、関心のある方は検索してください。
 この「老爺心お節介情報」はご自由にご活用頂いて結構です。
阪野貢先生のブログには、「大橋謙策の福祉教育」というコーナーがあります。そこには、私の論文やお遍路紀行文や私を育ててくれた人びととの出逢いのエッセイなどが収録されていますので、ご参照ください。

第1巻「四国お遍路紀行・熊野古道紀行―歩き来て自然と居きる意味を知るー
第2巻「老爺心お節介情報―お変わりなくお過ごしでしょうかー
第3巻「地域福祉と福祉教育―鼎談と講演―
第4巻「異端から正統へ・50年の闘いー「バッテリー型研究」方法の体系化―
第5巻「研修・講演録―地域福祉の過去から未来へ
第6巻「経歴と研究業績―地域福祉実践・研究の系
第7巻「福祉でまちづくりー支え合う地域福祉実践・「まちづくりと福祉教育」の嚆矢
第8巻「大橋謙策若き日の論考―地域福祉論の「原点」を探る
別巻 「地域包括ケア・介護・CSW・潮流と展望~理論と実践・他人の土俵に乗る~
ブックレット「社会福祉従事者の社会福祉観と虐待問題

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